義務教育における「英語」の現状
義務教育における「英語」は平成20年度(2008年度)以降に大きな変化を遂げています。
長年、英語の授業は中学校から始まるものでしたが、平成21年度より小学校5・6年生から開始され、平成23年度に必修科目になりました。
さらに令和2年度(2020年度)からは、小学校3・4年生から英語の授業が始まるように改定されています。
このように義務教育における「英語」は拡大を見せていますが、未だに日本人の英語習得率は先進国の中で低い水準で、義務教育の英語では日本人特有のカタカナ英語になってしまっているのが現状です。
教師の英語力が低い
長年、小学校では英語が必修科目ではなかったため、ベテランの教師を中心に英語力のない教師が多いです。
また、小学校の多くは担任教師が全科目を担当しているため、本来は英語をほとんど話せないような教師が簡単な研修をして生徒へ教えているのが現状です。
一部では外部の外国人講師を招いて特別授業を行っていますが、ネイティブな発音の英会話は数回程度の学習で身につくものではありません。
教師の英語力が低いという問題もあり、義務教育での英語授業開始時期が前倒しされても英会話力に大きな変化は出ないでしょう。
小学校1年生からにするべき?
昨今は義務教育の英語授業を小学校1年生から行うべきといった意見が増えています。
その要因の一つになっているのが、英語の授業を取り入れる幼稚園の増加です。
幼稚園で英語を学んでも、小学校へ上がると学校で英語を学べない環境になってしまえば意味がありません。
幼稚園は義務教育ではなく、母親が働いている家庭は保育園を利用しているなど課題も多いですが、小学校1年生から英語の授業が必須になれば幼稚園から継続的に英語を学び続ける環境を用意できます。
また、ネイティブな発音の英語を聞き取るための英語耳は7~9歳までに急成長すると言われています。
英語力がない担任教師の授業では意味ないですが、7~9歳の義務教育においてネイティブな発音をできる英語教師の授業を受けさせることが理想です。
文法訳読方式の問題点
義務教育の小中学校から始まり、高校・大学までの英語授業では一貫して「文法訳読方式」が採用されていて、これが日本人の英語力を下げる大きな要因と言われています。
文法訳読方式とは、英語を日本の文法に直して訳すものです。
主な事例をご覧ください。
英文:Taro played baseball with Tatsuya
和訳:太郎は達哉と一緒に野球をした
このように、英文では一番最後に達哉の文が出てくるのに対して、日本では文法が違う理由で達哉が分の冒頭付近に登場します。
文法訳読方式は英文を最後まで確認しないと日本語に訳すことができないため、日本人は英語圏の外国人とスムーズに話をするのが苦手です。
また、単語や動詞・助詞を和訳するだけではなく、日本の文法に置き換えて訳すという過程が加わるため、難易度が高くなって頭が混乱。
結果的に義務教育の授業を受けても英会話の能力は身につかないという状況に陥っています。
こうした根本的な所から変えていかないと、義務教育だけでビジネスレベルの英会話を身に付けることはできないでしょう。